冬の日の午後
久しぶりにその人の
お見舞いにいくことになりました。
折り鶴を折ろうかとも思いましたが、
かえって気を遣わせてしまうかと思い、
折りませんでした。
青い天井の病院だったので、
なんとなく覚えてはいたのですが、
うろ覚えというものでした。
向かう途中に川があったので、
寄ってゆく事にしました。
火山灰が落ちていていたりしたのです。
鳴き声が聞こえたような気がしたので、
耳を澄ましてみるのです。
そこには誰もいませんでした。
とても遠くの橋にシルクハットをかぶった
男の人が見えるくらいなのです。
世界はまるで繋がっていないようでした。
あの海の向こうでさえ、
すぐに変わってゆくのですから。
携帯電話を見て、
お見舞いに向かってゆくのです。
手はかじかんでいて。
少しだけ寒い冬の日の午後でした。